化学の教養を知りたい人「歴史的に有名な化学者をもっと知りたい。化学の知識なしでも、学んで楽しい化学の教養を身につけたいです」
そんな悩みを解消します。
今日ご紹介するのは、19世紀最大の化学者とも呼ばれたドイツの化学者リービッヒです。
これだけのタイトルでもスゴいですが、他にも次のように呼ばれることがあります。
- 近代科学教育の開祖
- 有機化学の父
- 農芸化学の父
- 生理学の父
「一体彼はなにをこんなにしたんだろう」と興味を持ちませんか?
本記事を読めば、化学初心者でも、そんな化学界の歴史的な発展を学ぶことができます。
それでは「ユストゥス・フライヘル・フォン・リービッヒ(Justus Freiherr von Liebig)」の業績の数々を見ていきましょう。
- リービッヒがどのように化学界を引導したのか
- 農芸学界での活躍とは
- 生物化学にどう貢献したか
- 食品加工やその他の産業での功績とは
リービッヒの後押しした有機化学の大発展
リービッヒは化学者として、下記5つの有機化学に大きな功績を残しました。
- 異性体の概念を見つける
- 有機化合物の分析技術の開発
- その他の有機化学の開拓
- 世界初の学生実験室をつくる
どれも聞こえは難しいですよね?
ですが、化学知識ゼロでも、さらっと説明していくので安心して読んでください。
それでは順番にみていきましょう。
異性体の概念を見つける
リービッヒとフリードリヒ・ヴェーラーは、分子式が同じでも構造が異なる分子(異性体)の概念を発見しました。
これは、それぞれが研究した2つの分子が「どちらも銀と酸素、窒素と炭素の元素を1つずつ」で構成されていたことからわかったおかげです。
性質がまったく違うのに、同じ元素の種類と数でつくられているのは不思議ですよね?
こうした異性体は有機化学の分野でも多く存在しているので、この発見は有機化学の開拓の礎にもなりましたよ。
有機化合物の分析技術とは
リービッヒは、有機化合物の主な成分である炭素(C)と水素(H)の量を分析できる方法を開発しました。
それまでは一つの化合物を調べるのに1週間ほどかかっていたところを、彼の技術は1日にいくつも分析できるようになったのです。
さらに、フランスの化学者 デュマ(Dumas)が窒素の分析法を考えだしたことで、有機化学の広がりがスピードアップしましたよ。
ちなみに、上の変わった形のガラス球が、リービッヒが発明した炭素量を分析する実験器具です。
このリービッヒのカリ球(kaliapparat)は、世界最大の科学技術団体「アメリカ化学会(ACS)」のロゴにもついてます。
その他の有機化学の開拓
リービッヒは、自分自身の分析法などを用いながら、有機化学の研究を進めていきました。
たとえば、次のような発見をしました。
ここまでのリービッヒの実績をみると、彼が「有機化学の父」と呼ばれていることも納得ですね。
世界初の学生実験室をつくる
研究と並行して、大学の教授になったリービッヒは、大学の化学教育の改革に乗り出します。
当時の大学では化学科といっても、教授の話を聞くだけの講義ばかりでした。
そこでリービッヒは、世界で初めて化学科に学生が実験をできる環境を設備したのです。
やっぱり実験できた方が楽しそうですよね?
結果、世界中から学生がリービッヒの元に集まり、学生による実験が世界に普及していきましたよ。
ちなみに、リービッヒ冷却器という器具があるのですが、もともと化学者ワイゲルが発明した実験器具です。
ただ、リービッヒ冷却器と呼んでいた学生たちが広めていったため、器具の名前はリービッヒ冷却器として定着しています。
農芸化学に進出していったリービッヒ
有機化学の分野で成功をおさめたリービッヒは、農業の分野で新しい風を吹き込みます。
- 無機栄養説とは
- リービッヒの最小律とは
- 化学肥料の開発はどうだったのか
順に解説していきます。
無機栄養説とは
リービッヒは農業界で新たな発見をします。
- 空気中からの炭素で植物が成長する
- 窒素やリン酸、カリウムの無機質が植物の成長には不可欠
当時の農学者たちは、腐葉土によって植物の成長が促進するため、植物を構成する炭素は土から直接吸収されていると考えていました。
ですが、リービッヒは空気中からの炭素を得て、成長していることを明言したのです。
また、リービッヒは、腐葉土が効果的なのは、土の無機質の量を増やしているためだと説明しています。
ただ、画期的なリービッヒの考えには、「植物がどのようにして窒素を取り入れているのか」について理解が間違っていたそうです。
リービッヒの最小律とは
リービッヒの最小律とは、必要な無機物のうち、植物の成長はもっとも不足している栄養素に左右される法則です。
たとえば、もし窒素が足りていない土壌で、どれだけリン酸やカリウムを与えても、植物の成長に影響はできないということになります。
なので、植物の成長には栄養素のバランスの良い土がベストであることがわかったのです。
化学肥料の開発はどうだったのか
栄養素のバランスが良い土壌を探すとなると限られてきそうですよね?
そこでリービッヒは人工的にぴったりの化学肥料をつくることを始めます。
ただ、実際リービッヒの作った肥料は効果が薄いわりに、高かったとのことです。
しかし、のちの化学肥料の研究にも繋がっていったことを考えると、リービッヒが「農芸化学の父」と呼ばれるのにも頷けますね。
その他の応用化学でのリービッヒの功績とは
有機化学と農芸化学についで、リービッヒは複数の分野へと足を踏み入れました。
- 生物化学での実績とは
- 食品加工業での発明
- 製鏡業界に残る技術
それでは、彼の各分野における功績を見ていきましょう。
生物化学での実績とは
リービッヒによる生物学での成果は残念ながらめぼしいものではありません。
彼がまとめたのは、「どのようにして動物は食べたものを熱エネルギーに変化させているのか」という推論でした。
ただ、実際はほとんどが間違っていることがわかっています。
しかし、化学を生物学に応用する生物化学という新しい考え方が、その後の生物化学の発展に繋がったため、リービッヒの間違った仮説を全面否定することができませんね。
食品加工業での発明
リービッヒは、食品加工業界でも化学を応用して、さまざまな成果を出しました。
- マーマイトの発明
- 肉エキスの発明
- 粉ミルクの製造の効率化、など
マーマイト(Marmite)は、ビールの醸造でいらなくなった酵母エキスから作った、パンにぬる黒い色のジャムのようなものです。
黒い色と酸っぱい味、独特な香りから苦手な人も多いですが、ビタミンBを多く含むので健康には良いですよ。
バターを塗った上につけて、ぜひ一度召し上がってみてくださいね。
製鏡業界に残る技術
最後にご紹介するのは、現在の製鏡にも残るリービッヒによる技術革命についてです。
リービッヒは銀鏡反応を発見して、鏡の製造へと応用しました。
この方法は、それ以前の製鏡にかかった手間も時間も省くことができ、まさに革命的だったのです。
まとめ:あなたはもう知っている!
このように、さまざまな分野での功績を残してきたのがユストゥス・フライヘル・フォン・リービッヒになります。
化学での実績のみならず、化学を応用してさまざまな新しい分野を開拓していったリービッヒには驚いてしまいますよね?
ですが、この記事を読んだあなたは、もう19世紀最大の化学者について知っているんですよ!
本記事を書くにしたがって、次の2つのサイトを参考にしました。
リービッヒについて詳しく知りたいという方は、英語にはなりますが、読んでみてくださいね。
>>ブリタニカ:William H. Brock による「Justus, baron von Liebig」
>>論文:Gopalpur Nagendrappa による「 Justus Freiherr von Liebig(2013)」
また、別のスゴい偉人をもっと知りたいという方には、「 ルイ・パスツール 」についての記事がオススメです。
ルイ・パスツールは、「近代細菌学の祖」とも呼ばれていて、今も使われるパスチェライゼーションやワクチンを発展させた有名な化学者ですよ。
他にも、世界初の化学繊維ナイロンを発明した「高分子科学と化学繊維ナイロンの父」ウォーレス・カロザースを知りたいのなら、次の記事を読んでくださいね。
興味が出てきたという方は、ぜひ読んでみてください。
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