今回は、バイオ燃料についてご紹介します。
バイオ燃料とは、生物資源(バイオマス)を原料にした燃料のことです。
バイオマスとは、動植物に由来する有機物で、化石資源(石油や石炭など)とは異なり、再生可能なエネルギー源です。
バイオ燃料は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を削減できる、環境にやさしい燃料としても注目されています。
また、エネルギー資源の多様化や安定供給にも貢献できると期待されています。
では、バイオ燃料はどのように作られ、どのように使われているのでしょうか?
- バイオ燃料の種類と特徴、作り方
- バイオ燃料のメリットと課題
- バイオ燃料の今後の展望
それでは見ていきましょう。
バイオ燃料の種類と特徴
バイオ燃料には、さまざまな種類がありますが、ここでは、代表的な4つのバイオ燃料について紹介します。
- バイオエタノール
- バイオディーゼル
- バイオジェット
- バイオガス
バイオエタノール
バイオエタノールとは、トウモロコシやサトウキビなどの植物を発酵・蒸留して作られるエタノール(アルコール)のことです。
エタノールは、ガソリンと混ぜて自動車などの燃料として使われているます。
エタノールの混合比率位によって、E3(3% 混合)や E10(10% 混合)などと表記されます。
バイオエタノールの特徴は、以下の通りです。
- ガソリンに比べて、燃えたときに発生する二酸化炭素(CO2)の量が少ない
- エンタノールは、植物が光合成で吸収した二酸化炭素を含んでいるので、カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収のバランスがとれている状態)と考えられる
- エンタノールは、ガソリンとの混合によって、ノッキング(エンジンの異常燃焼)を防ぐ効果がある
- エタノールは、石油に比べて安価に生産できる
バイオディーゼル
バイオディーゼルとは、ナタネ油や大豆油などの植物油や廃棄用油などをメチルエステル化(アルコールと反応させる)することで作られるディーゼルエンジン用の燃料です。
ディーゼル燃料と混合して使用される一般的で、混合比率によって、B5(5%混合)、B20(20%混合)などと表記されます。
バイオディーゼルの特徴は、以下の通りです。
- ディーゼル燃料に比べて、燃える際に発生する二酸化炭素の量が少ない
- バイオディーゼルは、植物油や廃食用油などの再生可能な資源を原料とするので、カーボンニュートラルと考えられる
- バイオディーゼルは、硫黄酸化物や黒煙などの大気汚染物質の排出が少ない
- バイオディーゼルは、ディーゼル燃料との混合によって、エンジンの潤滑性や冷間始動性を向上させる効果がある
バイオジェット
バイオジェットとは、航空用のジェット燃料の代替として作られるバイオ燃料です。
微細藻類や木材チップなどのバイオマスを原料として、水素化やガス化などの化学的なプロセスで製造されます。
バイオジェットの特徴は、以下の通りです。
- ジェット燃料に比べて、燃焼時に発生する二酸化炭素の量が少ない
- バイオジェットは、食用作物と競合しない非食用のバイオマスを原料とするので、カーボンニュートラルと考えられる
- バイオジェットは、ジェット燃料との混合によって、航空機の燃費や排出ガスの性能を改善させる効果がある
- バイオジェットは、ジェット燃料と同等の品質と安全性を持つ
バイオガス
バイオガスとは、家畜排泄物や食品廃棄物などの有機物を嫌気性発酵(酸素のない環境での発酵)させることで生じるガスのことです。
主な成分はメタンで、発電や熱供給に利用されるほか、自動車などの燃料としても使われます。
- バイオガスは、廃棄物の処理とエネルギーの生産を同時に実現できる
- バイオガスは、メタンを含んでいるので、高い発電効率や熱効率を持つ
- バイオガスは、メタンを燃焼させることで、温室効果ガスの排出量を削減できる
- バイオガスは、地域に応じて、さまざまな原料から作ることができる
バイオ燃料の作り方
続いては、簡単にバイオ燃料がどのようにして作られているのかを、理解してみましょう。
ここでは、3つのバイオ燃料の作り方を説明します。
- 熱分解
- 発酵
- 精製
順番にみていきましょう。
熱分解
熱分解はバイオ原油を作るために利用されます。
ここでは、木質や藻類などのさまざまなバイオマスを高温で熱することで分解します。
厳密には、熱分解にも温度や環境によって異なります。
- パイロリシス(Pyrolysis):
500〜700度の無酸素の環境 - ガス化(Gasification):
700度以上の低酸素の環境 - 水熱液化(Hydrothermal Liquefaction):
200〜300度の高気圧の環境
使い分けは、「どのような材料があるのか」と「どのようなバイオ原油を作りたいのか」によって、変わってきますよ。
こうして熱分解によって、バイオ原油が作られているのです。
それぞれについて詳しく読みたい方は、こちら(英語)から。
発酵(ファーメンテーション)とは
発酵はバイオエタノールを作るために利用されます。
ここ使われる材料はとうもろこしやサトウキビなど、糖分(C6H12O6)を多く含む植物です。
発酵では、材料を糖化してできたシロップを、イースト(酵母菌)と一緒にタンクに入れて成長させていきます。
このタンクを酸素がない環境に放置しておくことで、イーストによって次のような反応が起こりますよ。
こうして発酵によって、バイオエタノール(C2H5OH)が作られているのです。
精製(リファイニング)
精製はグリーンディーゼルと作るために利用されます。
ここで使われるのは、アブラナやヤシ、藻類からとれる植物油や動物の脂肪、食用油などです。
ただ、原材料となる油はどれも、燃料として使うのに適さない形の場合が多くです。
なので、次のような過程を通して、目的に応じて精製していきます。
- ハイドロクラッキング:長い分子を細かくする
- 水素化:水素を分子に加える
そうすることで、グリーンディーゼルが完成するのです。
バイオ燃料のメリットと課題
バイオ燃料には、以下のようなメリットと課題があります。
- バイオ燃料は、再生可能なバイオマスを原料とするので、枯渇の心配がない
- バイオ燃料は、燃焼時に発生する二酸化炭素が、植物が光合成で吸収した分と同じであると考えられるので、カーボンニュートラルである
- バイオ燃料は、化石燃料に比べて、大気汚染物質や温室効果ガスの排出量が少ない
- バイオ燃料は、エネルギー資源の多様化や安定供給に貢献できる。特に、エネルギー需要の高い交通部門や航空部門において、バイオ燃料の導入は重要である
- バイオ燃料は、農業や林業などのバイオマス産業の活性化や地域経済の振興につながる。また、廃棄物の有効利用やリサイクルにも寄与できる
- バイオ燃料は、原料となるバイオマスの生産や収集、加工や輸送などの過程で、二酸化炭素や窒素酸化物などの排出が発生する。そのため、バイオ燃料の生産にかかるエネルギーと排出量とのバランスを考える必要がある
- バイオ燃料は、食用作物や森林などのバイオマスを原料とする場合、食料や環境との競合や影響が生じる可能性がある。そのため、バイオマスの持続可能な生産や管理が重要である
- バイオ燃料は、化石燃料との互換性や安定性、品質や規格などの技術的な課題がある。そのため、バイオ燃料の普及や拡大には、技術の開発や改善、基準の策定や認証などの取り組みが必要である
まとめ「バイオ燃料の今後の展望」
この記事では、バイオ燃料の種類や特徴、作り方、メリットとデメリットを順番に説明してきました。
このように、バイオ燃料は、エネルギーの再生可能化や低炭素化に向けて、大きな期待が寄せられています。
バイオ燃料の発展には、以下のような方向性が必要とされています。
- バイオマスの効率的で持続可能な生産や利用の促進
- 非食用や廃棄物などの新しいバイオマス資源の開発や活用の推進
- バイオ燃料の性能や品質の向上やコストの低減の実現
- バイオ燃料の規格や認証の整備や国際的な協調の強化
- バイオ燃料の普及や拡大のための政策や制度の整備や支援の強化
バイオ燃料は、エネルギーの未来を変える可能性を秘めています。
しかし、その可能性を実現するには、さまざまな課題や課題に取り組む必要があります。
バイオ燃料に関心のある方は、ぜひバイオ燃料の最新の情報や動向に注目してみてください。
この記事が役に立ったのなら、嬉しいです。
他にも、地球温暖化について詳しく解説している記事もあるので、ぜひ読んでみてください。
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