- 金属3Dプリンターって可能なの?
- 金属3Dプリンターにはどんな種類がある?
- WAAM方式(アーク溶接)について詳しく知りたい!
『3Dプリント』はたくさんの魅力に溢れてます。
- 無駄が少ない・出ない
- 独創的な・型にハマらない形
- 3Dデザイン(CAD)のまま作れる
これらは、ほんの一部ですが、どれも試作や試験にぴったりな特徴です。
ただ、プラスチックを使った3Dプリンターは家庭用にまで普及しているのに対して、金属の3Dプリンターは業務用も発展途上。
金属を使った製品は、切削したり、鋳造したりするが主流です。
ということで、本記事はこれからが期待される『金属3Dプリンター(アディティブマニュファクチャリング|AM)』についてご紹介します。
インターン先で、金属3Dプリント(WAAM方式)に携わっていたので、そこでの研究や経験をもとに、より深堀りしていきます。
- 金属3Dプリンターとは
- 金属3Dプリンターのメリット・デメリット
- 金属3Dプリンターの種類・分類
- WAAM方式とは・魅力・種類
それでは見ていきましょう。
金属3Dプリンターとは
『金属3Dプリント』とは、金属を積層していく加工方法です。
型に溶けた金属を流しこむ鋳造や、金属の塊を削っていく切削とはまた違った、加工方法になります。
注目を集めている『金属3Dプリント』ですが、なにがそんなに良いのでしょうか?
まずは、それらを見ていきましょう。
金属3Dプリンターのメリット(魅力)
『金属3Dプリンター』の魅力・使うメリットはこちらになります。
- より少ない材料とゴミ
- より自由な設計ができる
- より安全な作業場をつくる
- より効率的な造りを試せる
- 好みに合わせて作り替えられる
- より手早いデザイン設計 ✖︎ プロトライプ作成
鋳造の型をつくる必要もなければ、切削による無駄も抑えられる。
そんな効率と自由さを兼ね備えた加工方法こそが、『金属3Dプリント』なのです。
金属3Dプリンターのデメリット(課題)
ただ、まだ現場での活用が多くないのには、多くの課題が背景にあります。
たとえば、
- プラスチックに比べて、『金属3Dプリンター』ではより高温で溶かす必要あり
- 金属は熱伝導性が高いため、温度が違う一層ごとに合わせた加工が必要
よって、『金属3Dプリンタ』はまだ発展途中の段階にあります。
その結果、いまだ価格競争がおこらず、なかなか手の届かない価格帯になっているのです。
このように、たしかに『金属3Dプリンタ』への注目度が高いですが、費用対効果を考えた際に、まだ実用への課題が多く残されているようです。
金属3Dプリンターの種類・分類
実は『金属3Dプリンタ』と一言に言っても、たくさんの種類・方式があります。
大まかに分けると、まずは二つに分類できます。
- パウダーベッド方式(PBF)
- デポジション方式(DED)
それぞれの比較しながら、より細かい分類も見てみましょう。
パウダーベッド方式(PBF)とは
パウダーベッド方式(Powder Bed Fusion|PBF)とは、金属粉末のプールを部分的に溶かす・焼結させることで積層する加工方式です。
液体ポリマーに照射させて硬化させる『光造形法(ステレオリソグラフィー)』に似た方式になります。
小さいモデルや複雑なパーツをプリントアウトするのに適していますね。
ただ、規模を大きくするのには、あまり適していません。
パウダーベッド方式の種類として、以下の二つが有名どころになります。
- レーザー積層造形法(Selective Laser Melting|SLM)
- 電子ビーム溶解(Electron Beam Melting|EMB)方式
簡単にいえば、焼結させている熱のもとが、レーザーなのか電子ビームなのか、という違いです。
デポジション方式(DED) とは
デポジション方式(Direct Energy Deposition|DED)とは、金属のワイヤーや粉末を溶かして、土台の上に積層していく方式です。
家庭用のプラスチック3Dプリンターに用いられる『熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling|FDM)』に近い方式になります。
デポジション方式のメリットには、これらが挙げられます。
- より速い加工速度で、大規模にも適している
- 異なる金属を加えることもできる
- より高密度で強いパーツを加工できる
より大きな金属部品をプリントアウトするのに適していますね。
ただ、精密性には難があるようです。
そして、デポジション方式にも、熱源によって4つに分類することができます。
- 電子ビーム溶解(Electron Beam Melting|EMB)方式
- プラズマデポジション(Rapid Plasma Deposition|RPD)方式
- アーク溶接(Wire Arc Additive Manufacturing|WAAM)方式
- レーザー加工ネットシェイピング(Laser Engineered Net Shaping|LENS)方式
パウダーベッド方式と同様に、アーク・プラズマ・レーザー・電子ビームと熱源によって分類されていることがわかりますね。
それでは、WAAM方式(アーク溶接)に焦点をしぼって、詳しく見てみましょう。
WAAM方式(アーク溶接)とは・魅力
WAAM方式とは、ワイヤー・アーク・アディティブマニュファクチャリング(Wire Arc Additive Manufacturing)の略称です。
名前にある通り、アーク放電の熱を使って、金属ワイヤーを溶かして、溶接・積層していきます。
ディポジション方式では、金属ワイヤーだけでなく、金属粉末に使うことができます。
ただ、金属ワイヤーと粉末を比べると、WAAM方式の魅力が見えてきます。
- ワイヤーの方が安価
- ワイヤーの方が扱いやすい
- ワイヤーの方がリード時間が短め
- 粉末の方がより自由にデザイン設計が可能
効率性や費用を考えると、WAAM 方式のメリットが際立って見えますよね。
それでは、さらに細かく WAAM方式の分類を見てみましょう。
WAAM方式(アーク溶接)の種類・分類
WAAM方式も、さまざまな放電アークの発生方法によって、分類することができます。
ここでは、ガスシールドアーク溶接である、次の4種類を紹介していきます。
- ガスメタルアーク溶接(GMAW)
- プラズマアーク溶接(PAW)
- ティグ溶接(TIG)
簡単にみていきましょう。
ガスメタルアーク溶接(GMAW)とは
ガスメタルアーク溶接(Gas Metal Arc Welding|GMAW)は、ワイヤーの先端でアークを発生させて、溶接していきます。
トーチの先からは、電極でもあるワイヤーだけでなく、シールディング(遮断)ガスを噴射します。
その空気は、空気中の酸素や窒素などと、溶けた金属面が反応するのを防ぐ役割があります。
そして、この空気の種類によって、二つの溶接方式に分けられます。
- ミグ溶接(Metal Inert Gas|MIG)
- マグ溶接(Metal Active Gas|MAG)
ミグ溶接は、鉄類以外の溶接で活用されて、アルゴンやヘリウムなどのシールディングガスが使われます。
対して、マグ溶接は、鉄類の溶接に活用されて、二酸化炭素やアルゴン、酸素が混ぜられたシールディングガスが利用されますよ。
プラズマアーク溶接(PAW)とは
プラズマアーク溶接(Plasma Arc Welding|PAW)では、タングステンを電極に、放電アークを発生させます。
タングステンは消費されませんが、ワイヤーを横から与えてあげる必要があります。
また、ミグ溶接のように、アルゴン等のシールディングガスを噴射しますね。
ただ、PAWでは追加で、プラズマガスの噴射が必要になります。
ティグ溶接(TIG)とは
ティグ溶接(Tungsten Inert Gas|TIG)は、PAW と同様に、タングステンを利用してアークを発生させる方式です。
ガスタングステンアーク溶接(Gas Tungsten Arc Welding|GTAW)とも呼ばれています。
PAWに似ていますが、つぎの違いがあります。
- プラズマガスが必要ない
- タングステンの電極がノズルの外に出ている
こうしてみると、用途に合わせた溶接方法を考える必要がありそうですね。
【まとめ】金属3Dプリントはまだまだこれから!
このように、『金属3Dプリンター』なかなか興味深いですね。
量産には適していないですが、これからの時代、自由なデザイン・効率的な設計が主流になっていく中で、注目度が高いですね。
この記事からも分かるように、多くの種類へと分類・比較ができます。
すべてを知ることは難しいですが、表面だけでも知れると、それぞれに合った用途が見えてきますね。
この記事が、参考になったのなら幸いです。
わたしが金属3Dプリントについて調べていく中で参考にした資料はこちらです。
- Buchanan, C. and Gardner, L. “Metal 3D printing in construction: a review of methods, research, applications, opportunities and challenges,” 2019.
- Rodrigues, T.A. Duarte, V. Miranda, R.M. Santos, T.G. and Oliveira, J.P. “Current status and perspectives on wire and arc additive manufacturing (WAAM),” 2019.
- Li, J.L.Z. Alkahari, M.R. Rosli, N.A.B. Hasan, R. Sudin, M.N. and Ramli, F.R. “Review of wire arc additive manufacturing for 3D metal printing,” 2018.
- Ding, J. Martina, F. and Williams, S.W. “Production of large metallic components by additive manufacture – issues and achievements,” 2015.
- Xia, C. Pan, Z. Polden, J. Li, H. Xu, Y. Chen, S. and Zhang, Y. “A review on wire arc additive manufacturing: monitoring, control and a framework of automated system,” 2020.
- Hunko, W. “Cold Metal Transfer-Gas Metal Arc Welding (CMT-GMAW) Wire + Arc Additive Manufacturing (WAAM) Process Control Implementation,” 2018.
英語ですが、わかりやすく書かれているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
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