新型コロナウイルスが流行っている今、治療薬やワクチンの開発が急速に進められています。
ここでのワクチンとは、あらかじめ弱ったウイルスや病原菌を接種することで免疫力を高め、感染症の予防するための医薬品のことです。
では、いつからワクチン使われるようになったのでしょうか?
その鍵をにぎるのが、今回ご紹介していくフランスの化学者・細菌学者『ルイ・パスツール』です。
- ルイ・パスツールの実験と大発見とは
- パスツールの3大偉業とは
この記事では、科学に前知識が少ない人でも楽しめる内容になっています。
それでは、ルイ・パスツールの偉業の数々を順に見ていきましょう。
ルイ・パスツールが明らかにした細菌感染の原因
皆さんが空気中のウイルスや細菌によって感染が引き起こされることを知っているのは、ルイ・パスツールが明らかにしたためです。
では、彼以前は何が病気の原因と考えられていたのでしょうか?
一昔前までは、人々に広く浸透していた病因として、瘴気(しょうき)が信じられていました。
瘴気とは「悪い空気」という意味で、汚染された空気や水が広がることで病気が蔓延するとされたのです。
しかし、顕微鏡を使って細菌が観察されたことで、細菌が病気の原因ではないのかと考えられ始めました。
また、食べ物が腐った時に細菌が多いことがわかったことで、食べ物が腐るときに細菌が自然発生すると信じられるようになったのです。
ただ、まだこの時点では、細菌が不思議と発生するという認識のみでした。
ここで、ルイ・パスツールの「白鳥の首フラスコ」実験によって、私たちの知る常識に近づくことになります。
「白鳥の首フラスコ」とは、下の画像のように、口が長くS字に曲げられたフラスコです。
パスツールの実験の手順は以下のとおり。
- 肉汁を普通のフラスコと白鳥の首フラスコの中に入れる
- 両方のフラスコを加熱することで、肉汁内の細菌を死滅させる
- 時間をおいて、中身の肉汁を観察する
この実験の結果、普通のフラスコの肉汁は変色して腐ったのに対して、白鳥の首フラスコの肉汁は変化がありませんでした。
パスツールの実験結果をもとに、次の2つが明らかになります。
- 加熱することで細菌を死滅することができる
- 空気を伝って細菌は感染を起こす
一見、当たり前に思えることですが、この事実は「自然発生説」を打ち砕く科学界の大発見だったのです。
そして、この発見がさらなるパスツールの大偉業へと繋がっていきます。
低温殺菌法(パスチェライゼーション)とは
ルイ・パスツールは、加熱することで殺菌できることを食品と医療へと応用していきます。
パスツールによる食品の殺菌
たとえば、ワインを放っておくと酸っぱくなるという話は聞いたことありませんか?
実は、この原因は酢酸菌という細菌により起こります。
よって、ワインが沸騰しない程度の温度で殺菌してあげることによって、腐敗を防ぐことができるのです。
そして、この方法の英語名は、パスツール(Pasteur)の名前からとって、パスチェライゼーション(Pasteurization)と呼びます。
また、低温殺菌法は、ワイン以外にも牛乳の殺菌などにも使われることがありますよ。
このように、腐りやすい食品類でも、パスツールの低温殺菌法によって、保存期間を伸ばすことができたのです。
パスツールによる医療への応用
パスツールのいた当時の医療は、次のような状況でした。
- 不衛生な医療現場
- 殺菌・消毒されていない医師の手や医療器具
現在では信じられませんが、当時はあのように小さな生物が人間に影響を及ぼすとは考えらなかったのでしょう。
しかし、パスツールによって、細菌が外から多大な影響を及ぼしてくることがわかったのです。
class=”bold”>よって、医療現場での二次感染が広がるのを防ぐため、医療器具や手袋の殺菌やより衛生的な医療現場が使われるようになりました。
なので、パスツールは多くの命を救う結果となったのです。
ルイ・パスツールとワクチン開発
パスツールは蚕に始まり、豚や牛、家禽さまざまな動物の細菌感染について研究していきます。
その中の一つに、1870年代後半に流行した鳥コレラがあります。
そんな流行時に、パスツールは不活性化させた細菌をワクチンとして接種することで感染が予防できることを発見したのです。
ちなみに、パスツール以前にもワクチンの例はあったのですが、それは病原菌を直接接種していたために病気にかかるリスクもありました。
対して、パスツールはウサギの脊髄に接種させることで、人間に対して弱毒化させることに成功したのです。
そのほか、パスツールは狂犬病のワクチンをも開発しています。
今でもなお一度かかったらほぼ100%死に至ると言われている狂犬病ですが、そのワクチンを開発したことで当時2,500人以上の命を救ったのです。
狂犬病については、吉川泰弘さんのブログで詳しく解説されています。
もっと狂犬病について知りたいという方は、チェックしてみてください。
また、ここでの内容は『Trailblazers in Medicine(薬学の開拓者)』の54-55ページを参考にしています。
本は英語になりますが、薬学のさまざまな偉人をざっと解説しているので、ぜひ読んでみてください。
まとめ:パスツールがいたことで今の私たちが生きている
ルイ・パスツールは、ロベルト・コッホと共に「近代細菌学の祖」とも呼ばれています。
そんな彼の業績をまとめてみましょう。
- 細菌が外からやってくることを発見
- 加熱処理によるワインや牛乳の腐敗防止
- 医療現場の殺菌化による二次感染の削減
- 弱らせた病原菌を用いたワクチンの開発
当たり前が当たり前でない気づきは、いつの時代も難しいものです。
私たちが今思っている常識も、最初に間違っていることに気づける人が次世代の偉人なのかもしれませんね。
そんなパスツールのお気に入りの名言で終わりましょう。
Science knows no country, because knowledge belongs to humanity, and is the torch which illuminates the world.
科学に国境はない。なぜなら知識は人道に属すものであり、世界を照らす灯火でもあるからだ。
少しでも教養として学ぶことがあったのなら嬉しいです。
もしアインシュタインについて、もっと知っておきたいのなら、ぜひ次の記事をチェック!
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